こんにちは。てんすけです。
「機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島」ついに公開しました!
私ももちろん公開日に鑑賞してきましたよ。
まだ見ていない方はぜひぜひ劇場へ!!!
今回の記事では、鑑賞済みの方へ向けて初見ではいまいち分かりづらい部分や、より深く作品を味わうためのポイントを解説していきます。
ここから先はネタバレあります
ガンダム基本的な世界観
「機動戦士ガンダム」シリーズの大前提です。
我々の生きる西暦からはるか未来に人口爆発、食糧難、地球環境悪化と問題が大量発生したため、人類は宇宙へと生活圏を広げます。
年号も西暦から宇宙世紀と改めて、日本やアメリカといった国の枠組みも取っ払って地球連邦を作ります。みんなが一つになって協力してめでたしめでたし!
とは、なりません
図にある通り、コロニーに住んでいるのは貧困層がほとんど。もちろん、最初は移住希望者を募りますが、普通に考えて誰も宇宙で暮らしたくないですよね。
というわけで、コロニーで住む人たちは事実上地球を追い出された人たちなんです。
地球に帰ることもできず、コロニーにもう何世代と住み着いた人たちです。
この前提を頭に入れておくだけで、物語をぐっと楽しめるようになりますよ。
Q&A
Qアムロが言っていたサイド7って?
A宇宙にあるコロニーです。
アムロたち、ホワイトベースの面々はすべてサイド7の避難民です。
サイド7にはガンダムなど最新のモビルスーツが開発される工場がありました。
そこにジオン軍のザクが偵察&破壊に来ます。
それによってサイド7は破壊され、避難民達はホワイトベースに乗ることになったのです。
この事件の際に、偶然ガンダムに乗り込んで戦ったのが主人公アムロ・レイです。
この辺りの流れは「機動戦士ガンダム」第1話を見ると一発で分かるのでぜひ見てください。
Qアムロはどうして終始けだるそうなの?
Aジオン軍のエース達との大きな戦いの連続で憔悴しきっていたからです。
後述しますが、ホワイトベース隊はサイド7から出発した後、ろくな補給も受けずに地球連邦軍本部のある南米のジャブローへ帰還するよう命令を受けました。
当然、ジオンの標的となるわけです。
北米方面軍司令官ガルマ・ザビ
歴戦の猛者“青い巨星”ランバ・ラル
さらに、ジャブローについた後も再びシャアを始めとしたジオン軍追撃部隊に襲われました。
そんなジオンの猛攻を、アムロ・レイはガンダムに乗って切り抜けたのです。
当然、身体的にも精神的にも不安定な状態になるわけです。
本エピソードのちょっと前にはあの「二度もぶったね!」のやり取りがありました。
これは、ネタにされていますが
アムロの精神的な限界
ブライトの苦悩
を同時に描いた本当に上手いシーンなんです。
Q回想シーンの意味は?
Aこの直前のエピソード、母との再会がアムロの心の傷になっている現れです。
アムロは幼い頃、父に連れられてサイド7=宇宙コロニーに移住しました。
この経験から、アムロは母性というものを知らずに育っていました。だから、母に甘えたかった。
しかし、再会した母はあまりにもアムロへの無理解にあふれていました。
これはぜひ「機動戦士ガンダム」の名作エピソードである「再会、母よ」を見ていただければと思います。
Qどうしてスレッガー中尉がホワイトベースにいるの?
Aジャブローで追加要員として乗ってきたからです。
後述しますが、今回の「機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島」は「機動戦士ガンダム」の劇場版ではありません。
正しくは漫画「機動戦士ガンダムTHE ORIGIN」の劇場版なんです。
こちらの漫画の原作は、今回の監督である安彦良和氏。
つまり、TV版「機動戦士ガンダム」のストーリーとは微妙な差異があります。
大きなものとして、ホワイトベース隊の進路が違います。
TV版では、アメリカ大陸に降りたホワイトベースは南米のジャブローに行くのにユーラシア大陸を横断して向かうという航路をとっています。
これって、不自然っちゃ不自然じゃないですか?
そこで、安彦良和氏の「機動戦士ガンダムTHE ORIGIN」では次のような航路に修正されています。
このようにアメリカ大陸からすぐ下の南米ジャブローに行ってから、本編で行っていたベルファストへと向かうという航路に変更されたのです。
どっちが良いとかではないですが、リアル志向な安彦良和氏の思いがあっての変更でないかと思います。
そして、スレッガー中尉はTV版よりも早くジャブローから部隊を引き連れてホワイトベースの一員となったのです。
Qブライトが言った「レビル将軍」って誰?
A地球連邦軍の最高司令官です。
ブライトが参謀本部からの入電で、
「そういうことか。」
と言った理由がこれに関係します。
つまり、参謀本部は早くガンダムをレビル将軍に見せたかったのです。
そういうことなら、急ぐ必要がない=アムロの救出が先決
と、判断をしてあの猿芝居をしたわけですね。
Qマ・クベは作戦が失敗したのに何で嬉しそうなの?
Aはじめから爆撃する気がなかったからです。
地球方面軍司令官マ・クベ中将は、弾道ミサイルを交渉手段としてもっていただけということです。
そもそも、ジオン軍の目的は地球の制圧です。
よって、パリやロンドンといった文化施設を爆撃するメリットってさほど無いんですね。
ましてやマ・クベは地球の文化を愛する男。
壺マニアです。
だから地球の文化を接収しつつ制圧することにこだわっていたわけです。
考察:より深く映画を楽しむために
ここからは、「機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島」をより楽しむために知っておいた方がいい裏話を紹介します。
TV版「ククルス・ドアンの島」と安彦良和
映画の冒頭でも、注釈がありましたが本作はTV版15話を“翻案”した作品です。
この“翻案”というところがミソです。
TV版「機動戦士ガンダム」は大きく3人の人物によって作られたと言われています。
総監督(全部やる人)
作画監督(絵を描く人)
この3人がいたからこそ生まれたのがあの名作。
ただし、当時の作画現場は壮絶なものであり、分業という概念が無いものでした。
そのため、負担はすべて安彦良和氏にのしかかっていたのです。
その結果、安彦良和氏は番組の中盤で倒れてしまい制作現場から離脱せざるを得ないという事態が生まれました。
そこで、生み出されたのが14話「時間よ、止まれ」、15話「ククルス・ドアンの島」を始めとする1話完結エピソードです。
これらは皮肉にも、「機動戦士ガンダム」の中でも作画崩壊のために迷エピソードとも語られています。
しかし、ストーリーは抜群に面白く、名エピソードであるというファンも多いです。
なぜならこれらは富野由悠季氏の類まれなる編集技術がいかんなく発揮されたエピソードだからです。
いや、安彦良和氏の離脱により、そうせざるを得なかった結果だと言えます。
そんな裏話があって、今回安彦良和氏はどうせ映画をやるなら自分が関われなかったエピソードを、ということで本作は氏の演出で蘇ったということです。
「機動戦士ガンダムTHE ORIGIN」を読もう
先述した通り、本作は「機動戦士ガンダムTHE ORIGIN」の設定が基盤になっています。
ぜひこちらの漫画を読んでより楽しんでいただければと思います!!
TV版との大きな変更点を説明すると……
ブライトさんの階級が少尉から中尉へ
ギレン、キシリア、ドズルの年齢が10歳プラスに
ジムの量産が早い
シャアの背景が丁寧に描かれている
こんな感じで、TV版とは違った楽しみができます。
おすすめですよ。
ただ、勘違いしてはいけないのが、「THE ORIGIN」の設定はあくまで安彦良和氏の考えた設定です。
氏自身も公言していますが、「機動戦士Zガンダム」など後の宇宙世紀シリーズにつながっていくのはTV版の設定です。
「THE ORIGIN」は今はやりのマルチバースものととらえておくといいと思います。
「機動戦士ガンダム」とガンプラ
しかし、富野由悠季氏いわくガンプラから入ったファンは二次ファンとのこと。
これはどういうことなのでしょうか?
実はTV版「機動戦士ガンダム」は打ち切りとも言われていたほど視聴率が悪い番組だったのです。
そんなガンダムが注目されたのは、放送終了後にガンプラがはやったから。
そこで再放送が行われ、アニメを見る人が増えて「機動戦士ガンダム」ファンを公言する人も増えたという背景があります。
この人気に後押しされてうまれたのが「劇場版機動戦士ガンダム」3部作。
安彦良和氏としてはなんとしても出したかった劇場版だったのです。
それもそのはず。
TV版は打ち切りの危機によってスポンサーからテコ入れがあったから。
代表的なのはGアーマー
この中にガンダムを収容できる!!
いわゆる合体メカです。
収容?
中はがらんどう。
リアルな世界観を徹底しているガンダムには異質すぎる存在。
こういったテコ入れの産物を安彦良和氏は変更したかったわけです。
そのため、劇場版では様々な変更がなされました。
このように、ガンプラ人気によってガンダムはリアル路線のアニメとして再び描くことができたという経緯があります。
ただし、反面TV放送時はそのガンプラによってストーリーを捻じ曲げられるなど迷惑も被っていたわけです。
安彦良和氏にとって、ガンプラが作品に大きく影響するのは避けたいが、そう無下にはできない。
そんな存在。
これを踏まえて「機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島」を見ると面白いです。
プラモデルとして出したら絶対に売れるスレッガー中尉専用ジムをあんな扱いしてるんですもん(笑)
実はこのシーンめちゃくちゃ笑ってました。
そして、サザンクロス隊の高機動型ザクのあっさり感。
一応、建前ではガンプラ用のメカを出すけど、ストーリーには影響させないという強い意志を感じて、ちょっぴり感動しました。
おわりに
今回の記事を読んで、もう一度「機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島」見てくれたら幸いです。
また、TV版や劇場版、はたまた他のガンダムシリーズを見てくれたらめちゃくちゃ嬉しいです。
こちらの記事で簡単に各シリーズについて解説しているのであわせて読んでみてください。
本記事の出典
「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」角川コミックス・エース