2000年代初頭。
それはオタクがまだ偏見をもたれていた時代。
その中でも、ガンダムオタクはキングオブオタクとも評されるほど、オタクの典型だった。(体感)
私は中学一年生。ガンダムが好きとクラスでバレること。それすなわち孤立を意味する時代だった。
そんな時代に、ガンダムとは無縁だった同級生を「沼」に沈めた話。
2000年代初頭は、ちょうど中学校や小学校で朝の10分間読書が始まったころだった。
この時代の朝読書は自由なもので、家から持ってきた好きな本を各々読んでよかった。
多くは、ハリーポッターだったり、学校の怪談だったり学校の図書館にある本を読んでいた。
その中で、私は角川スニーカー文庫を読んでいた。
ガンダムのノベライズばかり読んでいたのだ。
(閃光のハサウェイも読んでた)
しかし、オタクバレはしてはいけない。
きっちりとブックカバーでガードしていた。
そんなオタクを隠しながら、好きなものに没頭する毎日だった。
ある日、隣の席の女子(Yさん)が朝読書の前に声をかけてきた。
Yさん「てんすけって、何読んでるの?」
てんすけ「お、お??」
Yさんは割と活発で容姿端麗で、ちょっと大人びているタイプだった。
ヤンキーの先輩と付き合ったりしてるタイプって言うとわかりやすい。
そんな人に話しかけられた私は返答に困った。
てんすけ「ふ、普通の小説。」
本当はノベライズの新機動戦記ガンダムWだ。
Yさん「え?ちょ、ちょ、見せて。」
強引に本を取られた私は、自爆を覚悟した。
Y「うわ、てんすけキモ。」
ガンダムオタクだとバレる。しかもヤンキー系の人に。
明日から迫害が始まる。
しかし、Yさんの反応は予想とは違った。
Yさん「これガンダム?知らなかったけど面白いの?」
なんと表紙や口絵を見て、ルーズソックスとかミニスカートとかしてるYさんはガンダムに興味をもったのだ。
てんすけ「お、面白いよ。それはガンダムの中でも俺一番好きなんだ。登場人物もかっこいいし、ガンダムもかっこいいし。」
Yさん「ほんと?これ借りて良い?読みたい。」
え?(俺のこと)好きなの?
もちろん、ガンダムのことだとは知っていた。
しかし、クラスの中で滅多に関われないタイプの女子に話しかけられた私は舞い上がっていた。
もちろん、快く貸すことにした。
てんすけ「いいよ。それ5巻まであるから良かったら続きも。」
Yさん「ありがとう。読んだら続きも貸して〜」
そして、私はYさんにガンダムWのノベライズを貸すことになった。
単純に繋がりをもてたことと、ガンダムに興味をもってくれたことは嬉しかったが、まあそのうち飽きるだろうなと思っていた。
相手は私などとは違うイケイケの女子なのだ。
ガンダムを面白いと思うわけない。
すぐ飽きて、あの本は借りパクされるだろうな。
そんな風に思っていた。
しかし、事態は思わぬ方向に進んだ。
翌日にYさんは私のもとにやってきたのだ。
Yさん「ねえ!これめっちゃ面白い!ヒイロとデュオすっごい好きなんだけど!続き貸して!」
まさかの好感触。
ガンダムWすげえ。
Yさんは、自爆するヒイロに毎回かまうデュオという関係にハマったとのこと。そして、ウイングガンダムのデザインが好きで好きでたまらないという話をしてくれた。
俺に気があったのではなく、ヒイロ・ユイに気があったのか。
とはいえ、ハマってくれたのは嬉しい。
私は即座に2巻から5巻まで貸した。
数日後
Yさん「ねえ、てんすけ!ガンダムWのアニメ持ってる?見たいんだけど!」
アニメにまで手を出したか。
まさかここまでハマるとは思わなかったので、私はこれはガンダムに沈めるしかないと決意した。
てんすけ「俺は持ってないけど、普通にツタヤで借りれるよ。」
Yさん「ありがとう。アニメもおもしろい?見たらメールするね。」
その日の夜、ヒイロとゼクスの南極での戦いについて熱い感想を書いたメールが届いた。
彼女は引き返せないところまできていたのを感じた。
その後、中3になった時にガンダムSEEDが放送された。
その頃には受験勉強も始まり、クラスも違ったのでYさんとの交流はなくなっていた。
風のうわさでは、かばんにアスランのアクリルキーホルダーを付けているとの話を聞いた。
ヤンキーの先輩と付き合ってたYさんは、ザフトの先輩と付き合うようになったようだ。
もし同窓会があったら、確実に見てると思うから「閃光のハサウェイ」について語り合いたいな。
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まだ見てない方はぜひ劇場へ。↓の解説記事で予習していくとさらに楽しめますよ。